宮城県石巻市を拠点に、水産業を「新3K(カッコよくて、稼げて、革新的)」な産業に変えようと活動している「一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン」。私はその一員として、2024年にフィッシャーマン・ジャパン研究所を立ち上げ、漁師と研究者をつなぎながら、海や自然環境の調査に取り組んでいます
近年、海洋環境は急激に変化しており、ここ数年で例年より5度以上高い海水温が記録されました。その影響で、ホヤが9割以上死滅した場所や牡蠣の養殖量が半減したエリアも見られます。
しかし、漁業の現場では科学的なデータが不足し、研究成果も十分に現場に届いていないため、効果的な対策を立てるのが難しい状況です。こうした問題を解決するために、私たちは研究所を立ち上げました。
研究フィールドの一つである石巻市蛤浜では、海と森の両方の環境を対象に調査を進めています。漁師や大学の研究者と連携し、プランクトンの量や海水中のDNA、海底の堆積物、さらに森の土壌に含まれる微生物まで、多角的なモニタリングを実施。海や森の環境に手を加えた際、その影響がどのように現れるかを地域で学びながら、試行錯誤を重ねています。
もちろん、調査結果がすぐに環境改善に結びつくわけではなくまだまだ未知のことばかりです。今後は調査データをさらに集めて、誰もがアクセスできる形にしていきたいと考えています。
私たちの研究テーマは海洋環境だけではありません。持続可能な水産業を実現するために必要なこと全てがテーマです。海と森のつながり、漁業界のDX、水産業で働く人たちの人権。これからも垣根を超えた研究を進めていきたいです。
<Driveメディアで紹介されました>
研究者の知識を漁師に。漁師の感覚や文化を研究者に。漁業と科学の架け橋となる「フィッシャーマン・ジャパン研究所」の川鍋一樹さん